日本の昔話や方言に強いLLMを探せ!地方創生AIプロジェクト

AIは標準語(共通語)が得意です。インターネット上のテキストの大半が標準語で書かれているため、当然の結果です。しかし、地方創生や観光案内、高齢者の見守りといった文脈では、「方言(Dialect)」が重要なインターフェースになります。

「標準語だと冷たく感じる」「方言で話しかけられると安心する」。そんなニーズに応えるため、日本のローカルな文化に特化したLLMの開発が進んでいます。

現状の課題:方言データの不足

OpenAIのGPT-4やGoogleのGeminiでも、関西弁程度なら流暢に話せます。しかし、東北弁(ズーズー弁)や沖縄の方言(ウチナーグチ)、あるいは消滅危機言語に指定されているような島言葉になると、途端に精度が落ちます。

「イントネーション」という音声の壁もありますが、テキスト生成においても「語彙」や「文法」の壁が存在します。

注目モデル:日本語特化LLMの台頭

1. ELYZA-japanese-Llama-3

東京大学松尾研発のスタートアップELYZAが公開しているモデルは、日本語の指示追従能力が高く、方言の変換タスクにも一定の耐性があります。「以下の文章を〇〇弁に翻訳して」という指示で、それらしい出力を得ることができます。

2. Swallow (TokyoTech)

東京工業大学と産総研が開発したSwallowなどの国産モデルは、学習データに日本語のWebテキスト(Common Crawl)を多く含んでいるため、海外製モデルよりも日本の土着的な文脈を理解しやすい傾向があります。

実践:方言LLMの作り方

既存のモデルでは不十分な場合、どうすればよいでしょうか?答えは「ファインチューニング(あるいはRAG)」です。

昔話データセットの活用

青空文庫や各地の図書館デジタルアーカイブには、民話や昔話のテキストが眠っています。これらを収集し、方言と標準語の「対訳コーパス」を作成します。

{"input": "こんにちは、お元気ですか?", "output": "はいさい、ぐすーよー、ちゅーうがなびら"}

このようなデータセットを数十〜数百ペア用意し、LoRA(Low-Rank Adaptation)を用いて学習させることで、特定の方言に強い「方言アダプター」を作成できます。

活用事例:観光案内ボット

例えば、京都の寺社仏閣を案内するチャットボットを考えます。単に事実を羅列するだけでなく、「おこしやす」「〜どすえ」といった京言葉(のようなもの)で語りかけることで、観光客の体験価値(UX)は向上します。

技術的には、「キャラクターの設定(ペルソナ)」をSystem Promptに埋め込むだけでも効果があります。

あなたは京都の老舗旅館の女将です。物腰柔らかく、上品な京言葉を使って案内してください。

まとめ:言葉は文化

言語モデルの開発は、単なる技術競争から、文化保存や多様性の尊重へと視点を広げつつあります。

あなたの故郷の言葉をAIに残す。それは「過去のデータを食う」AIに対して、私たちができる「未来への文化的投資」なのかもしれません。